お客様からのご依頼
自宅の家庭用金庫の鍵を紛失してしまい、中に保管している家族の遺品を取り出せないというご相談をいただきました。お電話の時点で、金庫のメーカー名・おおよその購入時期・鍵のみか、ダイヤル併用かといった基本情報をヒアリングし、想定される構造に合わせてピッキングツールやライト、シリンダー点検用の工具などを準備して訪問しました。
現地に到着後、まずは設置場所と外観の状態を確認しました。こじ開けようとした痕跡や、扉・枠の歪みがないかを目視と触診でチェックし、不具合や破壊行為ではなく「純粋に鍵を紛失したことによる開錠依頼」であることを確認しました。そのうえで、お客様の身分証と金庫の設置状況を照らし合わせ、所有者であることを確認してから作業に入っています。
金庫は年代の古い機械式タイプで、シリンダー表面には摩耗が見られました。銘板からメーカー・型番を確認し、内部がおおよそ何ピン構造のシリンダーかを判断します。鍵穴内部をライトとスコープで確認し、異物の混入や明らかな破損がないことをチェック。問題がなかったため、非破壊でのピッキング解錠を行う方針としました。
作業は、まずテンションツールを鍵穴に掛け、ごく弱い回転力を一定にかけた状態を保ちながら、ピッキングツールでピンを1本ずつ押し上げていくという手順です。摩耗が進んだシリンダーでは、ピンが正しい位置に揃ったときの感触が曖昧になりやすいため、テンションの強さを数段階に変えながら、反応が出るポイントを繰り返し探っていきます。途中で抵抗の変化が不自然な箇所があったため、一度作業を止めて潤滑剤を少量補給し、再度ピンの動きを確認しました。
全てのピンが適正位置に揃ったタイミングで、シリンダーがわずかに回転する感触がありました。そのまま鍵で回す角度と同じ位置までシリンダーを回し切るとロックが解除され、ハンドル操作で扉を開けることができました。開錠後は、施錠・解錠を数回テストし、内部機構に異常がないことを確認。鍵を紛失した状態で使い続けるリスクについて説明し、シリンダー一式の交換と新しい鍵の作成、さらにスペアキーの保管方法についてご案内して作業完了としました。

渋谷区の作業事例









