「貴重品を保管していた金庫が開かない……」というトラブルに直面すると、誰もが焦ってしまうでしょう。鍵の専門業者に依頼して開錠してもらうのが一般的ですが、自分でできる対応はあるのでしょうか。こちらでは、金庫のカギが開かなくなった場合に試していただきたい対応や、業者選びや業者への依頼方法について解説します。
■金庫の種類別の開かない原因
金庫を開けるためには、開かない原因を探ることが重要です。金庫が明かなくなる原因は、金庫の種類によって異なります。以下では、金庫の種類別に、開かなくなる代表的な原因について解説します。
ダイヤル式金庫
ダイヤル式金庫は、扉に取り付けられているダイヤルのメモリをあわせて開錠するタイプの金庫です。ダイヤル式金庫が開かなくなる原因として、以下が挙げられます。
暗証番号の失念
ダイヤル式金庫は、暗証番号が設定されています。ダイヤルを回して暗証番号を入力しなければ、開錠できません。しかし、暗証番号の失念により、開錠できなくなってしまうことがあります。企業では、暗証番号を管理していた担当者が離職してしまい、番号がわからなくなってしまうことも少なくありません。
内部の故障
内部に物理的な故障が生じて、金庫が開かなくなくことがあります。ダイヤル式金庫は堅牢な設計になっていますが、長期間の使用による経年劣化は免れません。頻繁に買い替える物ではないため、昔のダイヤル式金庫が使用されている現場は現在でも多くあります。一般的に、ダイヤル式金庫の耐用年数は20年程度です。
物の詰め込みすぎ
物を詰め込みすぎてダイヤル式金庫が開かなくなることも少なくありません。内側から鍵に圧力がかかり、回らなくなってしまうのです。ダイヤル式金庫には、物を入れすぎないように注意する必要があります。
テンキー式金庫
テンキー式金庫とは、扉に取り付けられたテンキーに暗証番号を入力して開錠する金庫のことです。0~9の番号を正しい順番で入力し、開錠を行います。物理的な鍵を併用するタイプも一般的です。テンキー式金庫が開かなくなる原因として、以下のような物が挙げられます。
電池切れ
テンキー式金庫は電池で稼働しているため、電池切れによって開錠できなくなることがあります。電池ボックスが外側にある場合は、電池を交換することで復旧可能です。電池ボックスが扉の内側にある場合は、一旦他の方法で開錠しなければ電池を交換できません。
暗証番号の初期化
暗証番号の初期化も、テンキー式金庫が開錠できなくなる代表的な原因のひとつ。一部の製品は、電池切れから一定時間が経過すると暗証番号が初期化され、利用者側で設定していた暗証番号が使えなくなります。暗証番号が初期設定に戻ってしまうため、再設定を行う必要があります。
入力ミスによるロック
製品によっては、セキュリティ上の理由から一定回数暗証番号の入力を間違えるとロックがかかる製品があります。このロックは時間が経過しないと解除されません。
指紋認証式金庫
指紋認証式金庫とは、パネルに指紋を押し付けて開錠するタイプの金庫のことです。あらかじめ管理者の指紋を登録しておく必要があります。許可された人しか開錠できないことから、高いセキュリティを誇る金庫です。指紋認証式金庫は、以下のような原因で開かなくなってしまうことがあります。
指先の汚れ
指先が汚れていると、認証パネルで指紋を正しく読み込むことができません。汚れ、油分、水分などが指先に付着してないか確認する必要があります。
認証パネルの汚れ
指紋と同様、認証パネルも汚れによって正しく読み取りができなくなることがあります。金庫の開け締めが多い場合は、都度拭き取るなどして対処しなければなりません。
登録されている指紋と実際の指紋の違い
指紋の変化により、開錠できなくなることがあります。人間の指紋は、年齢によって変化することがあります。また、ケガなどによって同じ指の指紋が変化することも少なくありません。こうした場合、同じ人の同じ指の指紋でも認証パネル側で登録されていない指紋として判別されてしまうため、開錠されません。
マグネット式金庫
マグネット式金庫は、磁力を使用して開錠するタイプの金庫です。付属のマグネットキーを近づけるだけで、簡単に開錠できます。頻繁に開け締める場合には最適な金庫のタイプです。
マグネット式金庫は、以下のような原因から開かなくなることがあります。
経年劣化
磁石の力は使用年数とともに劣化します。このことから、長期間使用しているマグネット式金庫は、経年劣化により開かなくなることがあります。
熱による磁力低下
磁力は環境による影響を受けます。特に注意していただきたいのは、熱による影響です。夏場や、暖房に近い環境では、熱によって磁力が低下し、マグネット式金庫が開かなくなることがあります。
■金庫の鍵が開かない時に試すべきこと
金庫の鍵が開かない場合、基本的には業者に開錠を依頼することになります。ただし、状態によっては利用者側で開錠できることも少なくありません。金庫の鍵が開かない場合に試すべきことを、金庫の種類別に解説します。
ダイヤル式金庫の鍵
暗証番号の失念によりダイヤル式金庫を開けられない場合は、周りに番号を知っている人がいないか確認してみましょう。可能な限り、過去の管理者に遡って確認してみることが大切です。
金庫のメーカーに問い合わせれば、製品に設定された暗証番号を照会できる場合があります。ただし、この方法は時間がかかるため、すぐに開錠したい場合には向いていません。
番号が確実に合っているのにもかかわらず開かない場合は、物を詰め込みすぎている可能性があります。扉を押しながらゆっくりとダイヤルを回すことで、解決するかもしれません。
テンキー式金庫の鍵
テンキー式金庫が開かなくなる代表的な原因は電池切れです。そのため、開錠できない場合は、まず電池切れを疑ってください。
電池を交換する場合は、乾電池のすべてを新品にしましょう。古い電池を含めると、またすぐに電池切れを起こしてしまうことがあります。
電池ボックスの場所がわからない場合は製品のマニュアルを確認してください。電池ボックスが扉の内側にある製品が電池切れを起こしている場合は、業者でなければ対応できません。
設定していた暗証番号で開錠できない場合はリセットされている可能性があるため、初期設定番号を確認しましょう。初期設定番号で開錠できた場合は、使いやすい暗証番号に再度変更しておくことをおすすめします。
指紋認証式金庫の鍵
指紋認証式金庫が開かない場合は、指、もしくは認証パネルの汚れが考えられます。手を洗う、パネルを拭き取るなどして、汚れを除去してください。
指を当てる場所が間違っている可能性もあるため、少しずつ場所を変えながら何度か指を当ててみましょう。指紋が変形してしまうため、力を入れて指を押し付けないようにすることもポイントです。また、指を押し当てるのが一瞬すぎると、読み取りできないケースがあります。
テンキー式金庫と同様に、電池交換で解決するケースもあります。
マグネット式金庫の鍵
マグネット式金庫が開かなくなる代表的な原因は、環境や経年劣化による磁力の低下です。強力な磁石をマグネットキーに触れさせると、磁力が回復するケースがあります。強力な磁石をマグネットキーに触れさせると磁力が回復するケースがある
■金庫がどうしても開かない場合は業者に依頼を
ここまで解説したのは、金庫の利用者側でできる簡単な対応や対策です。これらの方法を試してみても金庫が開かない場合や業者に依頼することをおすすめします。以下では、無理をせず、金庫の開錠を業者に依頼すべき理由について解説します。
破壊開錠は危険
すぐに中の物を取り出したい場合は、破壊開錠を検討する方もいるでしょう。しかし、前提として金庫の破壊開錠はおすすめできません。
金庫の破壊には、かなり大掛かりな作業が伴うほか、正しい方法で慎重に進める必要があります。一般の方が無理に破壊しようとすると、ケガの危険があります。そもそも、一般の方が破壊できるような金庫はごく一部です。
危険なだけではなく、開錠できる保証もないため、やめておきましょう。
業者に依頼したほうが費用はかからない場合も
費用の問題から、業者への依頼をためらっている方も多いでしょう。しかし、金庫の開錠は業者に依頼したほうが費用はかからない場合があります。
不用意に開錠作業を行った場合、開鍵できないだけではなく、さらに状態が悪化し、故障してしまうことも考えられます。金庫が使えなくなってしまった場合、業者に開錠を依頼して中の物を取り出す必要があるほか、新しい金庫を買わなくてはなりません。結果として、費用が二重に発生してしまうのです。
また、金庫のカギ開けには専門的な工具が必要になる場合があります。工具を購入しなければ、作業を開始することもできないのです。このことから、最初から業者に依頼していたほうが安く済むケースは少なくありません。
■業者に依頼して金庫を開けるのにかかる費用は?
業者に金庫のカギ開けを依頼する場合に発生する費用は、鍵が開かなくなった原因や作業内容によって異なります。一般的な費用相場は以下のとおりです。
鍵が開かなくなった原因 | 費用相場 |
暗証番号忘れ(テンキー式金庫) | ¥ 3,980~ |
暗証番号忘れ(ダイヤル式金庫) | ¥ 3,980~ |
鍵の紛失 | ¥ 3,980~ |
また、請求される費用は業者によっても異なります。少しでも費用を安く抑えたい場合は、複数の業者に相談して相見積もりをとりましょう。
■業者に金庫の鍵開けを依頼する際のポイント
上記のように、金庫が開かなくなった場合は無理をせず業者に依頼することをおすすめします。以下では、業者に依頼する際のポイントを解説します。
業者の選び方
インターネットで検索すると、複数の業者が見つかります。それまで依頼したことがない場合は、どの業者に依頼するか迷ってしまうかもしれません。以下では、業者の選び方について解説します。
金庫の鍵開け実績があるか
金庫の開錠には、極めて専門的な技術を要する作業が伴います。あまり技術がない業者に依頼すると、作業時間がかかるだけでなく、開かない可能性もあります。ホームページなどで、金庫の開錠に対応した実績があることを公開している業者であれば安心です。
料金設定は明確か
ホームページに公開されている料金や、作業員から案内される見積もりにわかりづらい点がないかでも判断してください。内訳に不明な点があれば、必ず確認しましょう。悪徳な業者は、「手数料」など不明瞭な内訳で不当な料金を請求してくるケースがあります。不審な点が見受けられる場合は、依頼を控え、他の業者に相談してください。
電話対応は誠実か
電話対応から、業者の信頼性を判断することも大切です。不誠実な対応が見受けられる場合は、依頼を控えましょう。
見積もりは無料か
業者によっては、現場での見積もりを依頼するだけで料金が発生することがあります。相見積もりで複数の業者の料金を比較したい場合は、見積もりだけで料金が発生する業者を除外したほうが良いでしょう。
スピーディーに対応してくれるか
スピーディーに対応してくれるかどうかも、チェックポイントです。現場への派遣に時間がかかるようであれば、一旦他の業者に相談してみたほうが良いでしょう。また、案内されていた時間になっても作業員が到着せず事前連絡もない場合は、あまり良い業者とは言えません。現場での対応によっては、正式な発注を控えましょう。
金庫の鍵開けを業者に依頼する際の流れ
以下では、電話相談から開錠が行われるまでの一般的な流れを解説します。
電話相談
まずは、電話相談を行います。金庫の開錠を依頼したいことや、金庫の種類などを伝えてください。
スタッフ派遣
作業を行うスタッフが現場に派遣されてきます。業者の人員体制や対応エリアにもよりますが、電話から30分程度で現場に到着するのが一般的です。
見積もり
作業員によって、金庫の種類や状態が確認されます。請求される費用の見積もりが提示されるため、不明な点がないかチェックしてください。
正式な依頼・作業開始
見積もりに納得した場合は、正式に開錠作業を依頼しましょう。作業時間は金庫の種類や状態によって異なります。シンプルな金庫であれば、30分~1時間で開錠可能です。防犯性の高い金庫であれば、開錠に3時間程度かかることもあります。
支払い
作業の完了後、金庫が問題なく開錠されていることを確認してください。最後に現金、もしくはクレジットカードで支払いを行います。
業者に金庫の鍵開けを依頼する際に必要な情報
業者に金庫の開錠を依頼する際には、業者からいくつかの情報を提供するように求められます。以下のような情報をあらかじめ用意しておくとスムーズです。
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- 金庫の種類
- 金庫が開かなくなった原因(故障、番号忘れ、鍵の紛失、など
- 金庫の大きさ
- 金庫を最後に開けた日
■金庫の処分方法
上記のとおり、経年劣化は金庫が開かなくなる代表的な要因です。業者に依頼して開錠できたとしても、極端に古い金庫をそのまま使い続けるのは好ましくありません。近いうちに、また開錠できなくなってしまうケースが十分に考えられます。
金庫の耐用年数は20年程度です。ただし、使い方や環境によっては、さらに早く寿命が来ることも考えられます。経年劣化によって故障が起きた金庫は、無理をして使い続けず、新しい金庫に交換しましょう。
古い金庫に関しては、然るべき方法で処分する必要があります。前提として、粗大ゴミとして自治体に回収を依頼できないケースがほとんどです。小型の手提げ金庫であれば、一般ゴミ、もしくは粗大ゴミとして回収してもらえることがあるため、自治体の分別ルールを確認しておきましょう。
他には、不用品回収業者に回収を依頼する方法が代表的です。大量の不用品回収を一度に依頼すると割引が適応されることがあるため、他の不用品とまとめて回収を依頼しましょう。
他にも、金庫の販売業者で古い金庫の引き取りを行っているケースがあります。新しい金庫を購入する際は、販売業者に相談してみましょう。鍵の業者が金庫の回収サービスを実施していることもあります。
金庫の鍵が開かない場合の対処法についてご案内しました。利用者側でできる対応は限られるため、どうしても開かない場合は決して無理をせずに業者に相談してください。不用意に手を付けると、状態が悪化し、完全に故障してしまうとも考えられます。